
「車のローンを返済中に債務整理をしたら、車がなくなってしまうのでは?」
車を失うのが心配で、債務整理に踏み切れない方は、意外とたくさんいらっしゃいます。
確かに債務整理によって車やバイクがなくなってしまうケースもありますが、それらを手元に残す方法もあるので諦める必要はありません。
今回は、車やバイクのローン返済中に債務整理をしたらどうなるのかみていきましょう。
ローン返済中でも車を残す方法も合わせて解説します。借金問題に困っているけれど車を失いたくない方は、ぜひ参考にしてみてください。(バイクについても基本的に同様です。)
<この記事の要約>
- 任意整理をする場合、車のローン以外を対象にすれば車を残せる
- 個人再生をする場合、所有権が留保されていなければ車を残せる。所有権が留保されていても親族に車のローンを一括返済してもらえば残せる。ただし、一定以上価値がある車だと、総返済額が増えることがある
- 自己破産をする場合、一定以下の価値しかなく、所有権を留保されていなければ車を残せる。所有権を留保されていても、親族に車のローンを一括返済してもらえば車を残せる
- 債務整理後は5~10年ほど車のローンを新たに組めないことが多い
目次
債務整理の手続き別、車の行方
車のローンがある場合に債務整理した場合の影響は、債務整理の種類によって異なります。以下でパターン別に車がどうなるのか、みていきましょう。
任意整理
任意整理は、債権者と個別に交渉して借金返済額や返済方法を決め直す手続きです。
車のローン会社を対象にして任意整理の交渉を行うと、車を引き上げられる可能性が高くなります。車のローンには所有権留保がついているケースが多いからです。
所有権留保とは、【ローン完済時まで車の名義をローン会社にとどめる】という担保の設定方法です。途中でローンを支払わなくなったら、ローン会社が所有権にもとづいて車を引き上げ、売却してしまいます。
ディーラーローンや信販会社のローンを利用すると、たいてい所有権留保がつけられますが、銀行のマイカーローンの場合、所有権留保をつけられないケースがあります。
車に所有権留保がついている状態で、車のローン会社相手に任意整理すると車が引き上げられ、手元から失われます。
一方、所有権留保がついていない場合には、車は引き上げられません。
所有権留保がついているかどうか確認する方法
所有権留保がついているかどうかは、自動車検査証(車検証)を見ればわかります。ここで『所有権者』がローン会社になっていたら所有権留保付き、購入者名になっていたら所有権留保はついていません。車のローンを完済していても、名義がローン会社に残っている(名義変更をしていない)場合があります。
任意整理でローン返済中の車を残す方法
任意整理の場合、所有権留保がついていても簡単に車を守れます。車のローンを対象にせず、それ以外の借金だけ対象に整理すれば良いのです。
任意整理では対象とする債権者を選べるので、車のローン会社を避けても問題ありません。車を失いたくなければ、そのローン会社以外の借金のみを対象に任意整理しましょう。
なお車のローンが残っていない場合には何の問題もなく、そのまま車を使い続けられます。
個人再生
個人再生は、裁判所に申立をして負債を大きく減額してもらえる手続きです。
個人再生について詳しい記事はこちら:「個人再生とは?メリットとリスク・費用について徹底解説」
ただし任意整理と異なりすべての債権者を対象にしなければなりません。すべての債権者を平等に取り扱わねばならないという『債権者平等の原則』が適用されるからです。
車のローンだけを対象から外すことは認められません。
所有権留保がついている車のローン返済中に個人再生をすると、約定どおりにローンが払われないことから、ローン会社が所有権にもとづいて車を引き上げてしまいます。
一方、所有権留保がついておらず、車が購入者名義になっていれば、個人再生をしても車を引き上げられる可能性はありません。
車のローン返済中の方が個人再生を検討するなら、必ず事前に車検証を確かめて「所有者名」がローン会社と自分のどちらになっているか、チェックしてみて下さい。
個人再生でローン返済中の車を残す方法
所有権留保がついていても個人再生で車を残す方法はあるのでしょうか?
実は、親族にローンを完済してもらうことができれば、車を守れる可能性があります。
親族に援助してもらい、残債を一括返済すれば所有権留保を外してもらえるので車を守れます。このとき、自分で残債を一括返済してはいけません。一部の債権者にのみ支払いをすると『偏頗弁済』となり、個人再生での支払い額を増額されてしまいます。
また、親族であってもお金を『借りて』返済してもらってはなりません。借金が返済できない状態での新たな借入れは『詐欺的な借入れ』として問題になることがあるからです。あくまで『援助』を受けることが必要です。
車のローンがない場合に想定されるトラブル
車のローンが残っていないなら、車が失われる心配はありません。ただし車の価値が高いと、その分返済額に上乗せされて総支払い額が上がる可能性があります。
個人再生では【最低限、所有する資産に相当する金額は払わねばならない】という原則(清算価値保障原則)があるからです。高額な車を所有していると、個人再生をしてもあまり借金が減額されない可能性があります。
自己破産
自己破産とは、裁判所に申立をしてほとんどすべての負債を免除してもらう債務整理手続きです。
自己破産について詳しい記事はこちら:「自己破産とは?メリットとリスク・費用について徹底解説」
自己破産でも『債権者平等の原則』が適用され、すべての債権者を対象にしなければなりません。車のローンだけを外すのは不可能です。
所有権留保がついている車のローンがある状態で自己破産をすると、約定どおりに支払われないことから、ローン会社が車を引き上げてしまいます。
自己破産でローン返済中の車を残す方法
車のローン返済中に自己破産をするとき、もし所有権留保がついていたらどうすれば良いのでしょうか?
車の評価額が低く配当へ回されない程度の車であれば、親族に援助を受け残ローンを完済してもらうのがよいでしょう。そうすればそのまま車に乗り続けられます。
※配当に回される基準額については、お住まいの地域管轄の裁判所に確認しましょう。
この場合も、親族にお金を『借りて』完済すると、借金が返済できない状態で新たな借入れをする『詐欺的な借入れ』と捉えられかねませんので、あくまで『援助』してもらって完済するようにしましょう。
なお自己破産でも【すべての債権者を平等に扱わねばならない】という債権者平等の原則が適用されるので、自分で一括返済してはいけません。そのようなことをすると偏頗弁済となり、借金の免除を認めてもらえなくなる可能性があります。個人再生以上にリスクが高くなるので、注意しましょう。
車のローンがない場合に想定されるトラブル
自己破産では、車の価値が一定より高いと破産管財人により没収されて、債権者への配当に回されます。地域によって基準額が異なりますが、定められた以上の価値があるとローンが残っていなくても車が失われます。
価値がない車であれば、自己破産をしても手元に残せます。
債務整理後は一定期間、車のローンを新たに組めない
債務整理で車が失われてしまったら、通勤や通院などに車が必要と感じる場合どうすればいいのでしょう?
債務整理後はしばらく車のローンを利用できなくなります。債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録され、いわゆるブラックリスト状態になるからです。
利用する債務整理手続きにもよりますが、手続き後5~10年ほどはブラックリスト状態であることが多いです。
その間に車を購入するなら、資金を貯めて一括払いによって車を購入する必要があります。もしくはご両親や配偶者の方など、親族名義でローンを組んでもらい、購入する方法もあります。
ブラックリストについて、詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
ブラックリストとは?【借金滞納や債務整理と信用情報】
また債務整理後、5年〜10程度が経過したら自分名義でも再度車のローンを組めるようになります。
債務整理後、いつのタイミングでどのようにして車のローンを組めば良いのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
債務整理後、車やバイクのローン審査に通らない場合はどうする?
不安がある場合は弁護士に相談
以上のように、債務整理をした場合でも車を残せるケースと残せないケースがあります。
その方のおかれた状況や、利用するべき債務整理によっても結論が変わってきます。どのような方法が最善の対応となるかは、人によって異なりますが、自分では適切に判断できない場合がほとんどでしょう。
債務整理をしても車を残したい方、自分にはどの債務整理が適しているのか分からない方は、1度弁護士に相談してみてください。ベストな対処方法をアドバイスしてもらえるでしょう。