
自分で会社を設立して会社経営している代表取締役も消費者金融や信販会社などから借金することがあります。
事業資金(運転資金)の足しにすることもよくありますし、個人的な借金もします。万一会社経営者が債務整理すると、代表取締役を辞めなければならないのでしょうか。
代表者の債務整理により会社自身もブラック状態になって国金などから借入ができなくなるかも知っておきたいところです。
今回は、会社代表取締役が債務整理したときの影響について解説します。
<この記事の要約>
- 債務整理には4種類あるが、自己破産以外の手続きであれば代表者や役員を退任する必要はない。ただ破産は役員の委任契約の終了事由となっているので、一旦退任し再任してもらう必要がある。
- 代表取締役と会社が一体とみられるような小規模な会社の場合は、代表取締役の信用情報が会社の借入の際に参照されることが多いため、代表取締役個人の債務整理によって、会社まで事業資金の借入が難しくなることがある。
- 経営者の債務整理は、複雑になりやすい。どのような手続きが良いのか、今後の建て直しの計画も含め、弁護士など専門家に相談するのが最善。
代表取締役は借金がかさみがちで借金額も多額になる
個人営業の個人事業主とは異なり会社を設立して経営をしている代表取締役(社長)が個人的に借金することも非常によくあります。
会社代表者の場合、普通の従業員サラリーマンよりもクレジットカードの利用額も大きくなりがちですし、つきあいで他人の保証人(連帯保証人)となることもあるでしょう。
旦那さんや父親経営の株式会社や有限会社では妻や母親などの家族が監査役などの役員になっているケースも多いです。
このようなケースでは、会社が不良債権などを抱えて資金ショートを起こし、会社経営が苦しくなると家族の生活が脅かされるので、社長が個人名義で事業資金を借り入れすることもあります。
もちろん社長であっても個人的な自宅購入資金のために住宅ローンを組むこともあるでしょう。
このように、会社の代表取締役は借金する機会が多いため、借金額(負債額)も多額になりがちです。
代表取締役が債務整理すると退任する?
法人の代表取締役が借金をかさねて支払いが苦しくなり、債務整理した場合、代表取締役を退任しないといけなくなるのでしょうか。
債務整理には任意整理、個人再生(個人民事再生)、特定調停、自己破産の4種類がありますが、これらのうち任意整理や個人再生、特定調停の手続きを執っても代表取締役を退任する必要はありません。
法人経営者であっても個人再生の住宅ローン特則も問題なく利用出来ます。
これに対し、自己破産して免責決定により支払い義務を0にしてもらいたい場合には、いったん代表取締役を退任することとなります。
これは、取締役と会社との契約が「委任契約」になっているところ、破産は委任契約の終了事由となっているからです。
ただし、代表取締役が自己破産者となっていったん取締役を退任したとしても、再任は自由なので、再任されれば、またもとのように代表取締役を務めることが出来ます。
代表取締役が債務整理すると会社も借入できない?
「代表取締役が債務整理する場合、代表取締役個人だけではなくその代表する会社(法人)も信用を失って金融ブラック状態となり、会社名義での借入ができなくなるのか?」という質問もよくあります。
法人は、日本政策金融公庫(旧国金)からお金を借りることが多く、その際保証会社や信用保証協会に保証してもらって保証付き融資を受けることなどもありますが、このような事業資金の借入が出来なくなると非常に不便です。
代表取締役が債務整理した場合の取り扱いについては、各銀行でもまちまちですが、特に代表取締役と会社が一体とみられるような小規模な会社の場合は、代表取締役の信用情報が会社の借入の際に参照されることが多いです。
また、保証付き融資であれば社長個人の信用情報はチェックしないけれども保証協会が入らない融資(プロパー融資)の場合は社長個人の信用情報も参照し、事故情報があれば融資の審査を下ろさないという運用の銀行(金融機関)もあります。
このように特に小規模の法人の場合は、代表取締役個人が債務整理したことによって、会社まで事業資金の借入をすることが難しくなることがありますので、注意が必要です。
社長がブラック状態になっていて審査が心配なら、別の人を代表取締役に立てた方が良いでしょう。
まとめ
会社の代表取締役が債務整理した場合、任意整理や個人再生、特定調停であれば退任の必要はありませんが、自己破産ならばいったん取締役を退任する必要があります。
代表取締役が債務整理した場合、小規模の会社やプロパー融資の場合、法人も融資の審査が通らなくなることがあります。
会社の代表者や役員の債務整理は、一般の方に比べて複雑になりやすいです。どのような手続きが良いのか、
今後の建て直しの計画も含め、弁護士など専門家に相談するのが最善です。