
借金返済を滞納したら、多くの場合裁判を起こされます。
裁判の対応に慣れている方はそう多くありません。
今回は、どのくらい滞納したら裁判になるのか、どのように対応すれば良いのかなど借金滞納による裁判について詳しく解説します。
- 借金を、平均半年〜1年ほど滞納・放置すると、多くの場合債権者から裁判が起こされる
- 裁判所からの通知を無視していると、財産を差し押さえられることがある
- 裁判に出廷し自分で対応すると、債権者の対応が厳しい、遅延損害金を支払わなければならない、日程の変更が原則できないなどのデメリットがある
- 借金返済を滞納している場合は、弁護士に相談し任意整理などの債務整理を検討することが望ましい
目次
借金を滞納・放置すると裁判が起こる
借金返済を滞納していると、債権者(借金の貸主)から裁判を起こされることがあります。
債権者は、債務者(借金の借主)が借金返済を滞納し、電話や郵便物などで再三督促をしても返済される様子がなければ、法律の力でなんとか取り返そうとします。
つまり、裁判が起こされるのは滞納し始めてから期間が経っている場合です。平均的には滞納から半年〜1年で裁判が起こされます。
借金を滞納した場合の流れについて詳しい記事はこちら:「借金を滞納した場合の流れとリスク・対処法【借金返済】」
裁判所からの通知を無視すると、財産を差し押さえられるおそれがある
被告(債務者)が出席しなくても、裁判は進み判決も出ます。
これを欠席判決と言います。
被告(債務者)が何の主張もなく裁判を欠席すると、すべて原告(債権者)の請求内容を認めたと扱われます。
債権者の請求内容は多くの場合、「残っている借金と遅延損害金の一括返済」です。
判決が出たら、債権者は、強制執行を申し立てることができるようになります。なので、判決が出た後も一括返済がされなければ、債権者は、債務者の財産を差し押さえようとするおそれがあります。
差押えの対象となる主な財産
預貯金
銀行などの口座の中の預貯金を回収されます。
生命保険
生命保険が強制的に解約され、解約返戻金を回収されます。
株式などの有価証券
株式などがある場合、強制的に売却されその金額を回収されます。
不動産
自宅などの不動産を所有している場合、競売にかけられて売却され、家に住めなくなる可能性があります。
動産類
車、貴金属、絵画、時計や高額なパソコンなどの財産が強制的に売却され、その金額を回収されます。
給料、賞与
給料や賞与(ボーナス)も差押えの対象です。ただし全額ではなく以下の金額が限度です。
手取り額の4分の1
税金や社会保険料などを差し引いた手取り額の4分の1が差押え対象。手元にはこれまでの4分の3の金額しか入ってこなくなる。
手取り額が44万円を超える場合は33万円を超える部分
税金や社会保険料等を差し引いた手取り額が44万円を超える場合、33万円を超える部分は全額が差押え対象となり、手元には33万円しか入ってこなくなる。
貸付金などの債権
誰かにお金を貸している場合などには、その債権も差し押さえられます。債権を差し押さえられると、支払いは債権者に行われるため、債務者の手元に返済金が入ってきません。
裁判にて自分で和解することも可能
借金滞納による裁判に出頭し、分割払いなどの和解をとるという方法もあります。
訴状が届いたら、同封されている「答弁書」を書いて簡易裁判所に返送します。そして呼び出し状に書いてある日時に裁判所に行き、口頭弁論期日に出頭します。
分割払いの和解に応じてくれる債権者は多いですが、自分で対応するには次のようなデメリットがあります。
裁判にて自分で和解するデメリット
和解に応じてくれない債権者もいる
分割払いや期日を延ばす提案を聞いてくれない債権者や、対応が厳しい債権者がいます。
遅延損害金を支払う必要がある
遅延損害金(遅延利息)とは、 金銭債務について、債務者が履行を遅滞したときに債権者に生じる、損害を賠償するために支払うべき金銭をいいます。
たとえば、売買契約において、次のような条件で、買主が代金の支払債務を負っていたとします。
- 売買代金……10万円
- 弁済期……2021年3月31日
- 遅延損害金の料率……年3%
買主が支払いを1年滞納してしまった場合、
・売買代金10万円
に加えて、
・遅延損害金として3000円
を支払うことになります。
(参考:【民法改正(2020年4月施行)に対応】遅延損害金について契約書のレビューポイントを解説!ー契約ウォッチ by LegalForce)
裁判にて、もし分割や延長の和解がとれたとしても、支払う金額の中に遅延損害金が含まれていることがほとんどです。
裁判に出廷する負担がかかる
裁判所で期日が開かれるのは平日です。被告(債務者)は仕事を休んだり、予定を変更したりして裁判所に赴く必要があります。
さらに、裁判所での手続きや弁論など、初めてのことに戸惑う方も多いでしょう。
日程の調整が原則できない
もし指定された期日が都合の悪い日時でも、変更してもらうことが原則できません。他の予定をなんとかずらして出廷する必要があります。
任意整理で遅延利息なし・長期分割払いにしてもらえる場合がある
ここまで読んでみて、「自分で裁判の対応をするのが難しそう」と感じた方も多いでしょう。個人での対応にはデメリットもいくつかあります。
借金返済の滞納があり、自分で対応することに自信がない場合は、弁護士に債務整理の相談・依頼をしましょう。
裁判を起こされた状態からでも債務整理を依頼することができます。
債務整理は、法的な対応によって借金を減額したり免除したりできる手続きの総称です。いくつかある手続きをまとめて債務整理といいます。
債務整理について詳しい記事はこちら:「債務整理とは?任意整理、個人再生、自己破産の費用とメリット・リスクを比較!」
債務整理の中でも、任意整理という手続きによれば、弁護士が債権者と交渉をして、元金のみもしくはそれに近い金額を長期(3~5年程度)の分割払いにできる可能性があります。遅延損害金をカットできるケースもあります。
任意整理で和解できたら、多くの場合遅延損害金はカットされますし、債務者が裁判所に行く必要がありません。弁護士に一任できます。
上で述べた訴訟との関係で言えば、上記デメリットを一部又は全部解消できます
裁判所からの通知が来てから、任意整理やその他の債務整理を行うことについて、また裁判所からの通知の詳細についてはこちらの記事で読めます。
【裁判所から通知がきたら】手紙の種類と意味を解説!【借金返済】
まとめ
借金を、平均半年〜1年ほど滞納・放置すると、多くの場合債権者から裁判が起こされます。
裁判所からの通知を無視していると、裁判が進み判決が出ます。その後も返済をしなければ、財産を差し押さえられることがあります。
裁判に出廷し自分で対応すると、債権者の対応が厳しい、遅延損害金を支払わなければならない、日程の変更が原則できないなどのデメリットがあります。
借金返済を滞納している場合は、弁護士に相談し任意整理などの債務整理を検討するのが望ましいと言えます。
借金総額や状況によって、何の手続きが最善なのか異なりますので、なるべく早く弁護士に相談しましょう。