
病気や家族の事情などにより、これまで通りの収入が見込めなくなってしまったら、生活保護を検討する方も多いです。
令和2年の生活保護受給者数は約206万人となっており、保護申請数は対前年同月と比べると、24.8%増加しました。これには新型コロナウィルスによる失業や収入減が少なからず影響していると考えられます(参考:被保護者調査(令和2年4月分概数ー厚生労働省))。
しかし、借金が残っている人も生活保護を受けられるのでしょうか。今回は、借金と生活保護との関係について解説します。
- 借金があっても生活保護の申請・受給はできるが、生活保護費から借金返済をするべきではない
- 銀行口座の履歴などから借金返済していることが後から見つかった場合、生活保護が打ち切りになる可能性がある
- 借金がある場合は、生活保護を受給する前に自己破産で解決するのが望ましい
- 生活保護受給中にお金が足らない・やはり生活が苦しいと感じる場合は借金をするのではなく、迷わずケースワーカーに相談する
目次
生活保護とは?
(引用:生活保護制度ー厚生労働省より)
生活保護は、病気や怪我によって働けなくなったり、働き手が亡くなったりして生活に困った際に、生活を支援してくれる制度です。
生活保護は原則として、ひと世帯(暮らしを共にしている家族)の最低生活費の額と世帯全員の収入額を比較し、収入の方が少ない場合のみ、不足する額を保護費として支給するしくみになっています。
ここでいう「最低生活費」に含まれるものは下記です。いくらが「最低」の金額であるかには、一定の基準があります。
世帯での
・食費、被服費、光熱費などの生活費
・家賃などの住宅費
・教育費
・医療費、介護費
生活保護については、住んでいる地域の民生委員や福祉事務所に相談します。申請手続きは福祉事務所で行います。
生活保護受給には条件がある
生活保護は「生活が苦しい」と感じれば誰でも受けられるわけではありません。世帯全員が主に下記のような条件を満たしている必要があります。
- 高額な資産を所有していない(生活にどうしても必要な不動産や車は残せる可能性があります)
- 働いて収入を得ることができない
- 家族・親族からの援助が受けられない
借金があっても生活保護受給できるのか
結論からお伝えすると、借金があっても生活保護の申請・受給はできるが、生活保護費から借金返済をすることができません。
上記の最低生活費の費目に借金返済は含まれていないことからも分かるとおり、生活保護では日常生活に最低限必要な費用が支給されるわけですから、生活保護から借金返済することは認められないのです。(ただし、葬祭、出産、修学旅行など、非日常的な費用が援助されることはありえます。)
借金を隠して生活保護受給することはできる?
借金があっても生活保護を受給すること自体が可能なら、生活保護をこっそり返済に充てても良いのではないかと考えてしまいそうですよね。
しかし、銀行口座の履歴などから借金の返済をしていることが、後からケースワーカー(生活相談員)などに見つかった場合、生活保護が打ち切られることがあります。
生活保護の不正受給がないように、ケースワーカーはかなり細かく生活状況の聞き取りや調査を行います。また、借金を隠したおかげで生活保護が受けられた場合などに、法律が定める犯罪に該当するおそれもあります。
生活保護受給すれば借金が帳消しになる?
「生活保護を受給し始めたら、借金がなくなる」と考えている方もおられますが、これは誤解です。借金返済義務が消えるわけではないので、借金を放置していたら、当然電話や郵送で矢のような督促がきます。
生活保護を理由に借金の督促やブラックリスト状態を解消できるか
債権者に「生活保護を受給し始めたので借金返済ができません」と主張したところで認めてはもらえません。
もし、引っ越して電話番号も変えれば、債権者からの督促が来なくなるかもしれませんが、信用情報に「借金を滞納した」という旨の事故情報が残り、容易には消えません。
そうなると、生活保護に頼らず生活していけることになったとしても、その後事故情報が消えて信用が得られるようになるまで、必要なローンを組んだりクレジットカードを作成することができなくなります。
ただ、自己破産をすれば借金返済をする必要がなくなるので、生活保護を受給しながら自立した生活の実現に向けて注力していくことができます。
以上の観点からは、借金がある場合には、生活保護を受給する前に自己破産で解決するのが望ましいと言えます。
生活保護受給中に借金することはできる?
生活保護受給中の借金自体は禁止されていません。ただ、そもそも生活保護を受給している状態では金融機関の融資審査に通らないことがほとんどです。
また、下記のようなデメリットもあります。
- 借金が収入としてみなされ、申告しなければならないため、その分受給できる金額が減る可能性がある
- 一般的な金融機関から融資を受けられないことで、闇金など違法な債権者から借りてしまいトラブルになるケースも見られる
生活保護受給中にお金が足らない・やはり生活が苦しいと感じる場合は借金をするのではなく、迷わずケースワーカーに相談しましょう。
まとめ
借金があっても申請・受給はできるが、生活保護費から借金返済をすることは望ましくありません。
銀行口座の履歴などから借金返済していることが後から見つかった場合、生活保護が打ち切りになる可能性があります。
借金がある場合は、生活保護を受給する前に自己破産で解決すると良いでしょう。
生活保護受給中にお金が足らない・やはり生活が苦しいと感じる場合は借金をするのではなく、迷わずケースワーカーに相談しましょう。