
借金返済を滞納し、督促を無視していると、裁判所から訴状や答弁書催告状、口頭弁論期日呼出状などの通知書類が届くことがあります。
このような裁判所からの通知には一体どのような意味があるのでしょうか?受け取ったときの適切な対処法も知っておきましょう。
今回は、借金返済を滞納した場合の対処法と、裁判所からの通知の意味を解説します。
<この記事の要約>
- 借金返済を滞納して裁判所からの通知が来ても、任意整理で分割支払いなど、債務整理により解決する方法がある
- 差押えの対象は土地建物、給与、車など生活に直に影響が出るものばかり
- 万が一差押えされてからでも、自己破産や個人再生を行えば差押え解除できる可能性がある
- どの状態でも、請求金額を一括で返済できない場合は弁護士に相談しよう
目次
任意整理で分割払いにできる可能性がある!
借金の返済を滞納してほったらかしにしていると、裁判所から通知が来ることがあります。
この段階になると、債権者(借金の貸主)に直接「もう1度分割で、少しずつ払います」といくら懇願しても、基本的には応じてくれません。
しかし、借金をもう1度分割にできる可能性があります。これから解説する方法が成功すれば、自分で債権者と交渉することなく、また多くの場合裁判所に出向く必要もありません。
それは、弁護士などの専門家に依頼をして任意整理を行う方法です。
任意整理は、弁護士などが債権者と交渉し、利息をカット・大幅減額して毎月の返済額を抑え、現在の支払いよりも負担を軽くする手続きです。
適切な段階でこの手続きを行えば、一括請求が来ていても分割払いにできるケースが多いです。
任意整理について詳しくはこちら:「任意整理とは?メリットやリスク・費用について徹底解説」
しかし、任意整理はあくまで交渉ごとなので、債権者が認めてくれなければ分割払いはできません。
また、あまりに借金の総額が大きい場合は、分割計画を立てても月々の返済額が大きすぎて立ち行かなくなるでしょう。
例えば、1社300万円の借り入れ先から一括請求の通知が来たとします。専門家に交渉してもらい、任意整理で3年分割ができることになったとしても、月々支払うのは約8万3000円の計算です。
もともと、返済が苦しくて滞納していたのだとしたら、3年間支払いを続けられるでしょうか?無理な方も多いでしょう。
任意整理ができない場合は?
任意整理で解決ができない場合はどうなるのでしょうか?
借金問題を解決する手続きの総称を債務整理といい、債務整理には任意整理以外にも自己破産、個人再生など種類があります。
収入に対して借金総額が大きすぎる場合は、自己破産で借金を0にするのが根本的な解決になります。
自己破産について詳しくはこちら:「自己破産とは?メリットやリスク・費用について徹底解説」
マイホームや車など財産を残したい・自己破産をすると利用できなくなる資格を使って仕事をしている など自己破産を避けなければならない理由がある時は、個人再生という手続きもあります。
個人再生について詳しくはこちら:「個人再生とは?メリットやリスク・費用について徹底解説」
弁護士に相談すれば、最適な手続きを提案してくれます。ただし債務整理の実績が豊富で、包括的な提案ができる事務所に相談するのが望ましいでしょう。
まずは早急に、債務整理の実績が豊富な弁護士事務所に相談し、裁判所から通知が来ている旨を伝えましょう。
滞納から裁判所の通知が来るまでの流れ
借金返済を滞納し始めてから裁判所の通知が来るまでは、だいたい以下のような流れです。
借金返済を滞納〜3日くらい |
---|
クレジットカードなら利用停止 |
滞納して1週間〜1ヶ月くらい |
電話やハガキなどによる督促 |
滞納して3ヶ月くらい |
信用情報機関に事故情報として登録 (ブラックリスト状態に) |
滞納して3ヶ月〜6ヶ月くらい |
裁判所からの通知が来る |
このように、借金を滞納し続けていると自宅に督促状(催促状)が届きます。それも無視していると裁判所から特別送達という郵便で通知が来ることがあります。
それでは、裁判所からの通知とはどのような内容のものなのでしょうか?
裁判所からの通知には2種類がある
裁判所からの通知書の内容には、大きく分けて2種類あります。
一つは支払督促という手続きをされたときの支払督促申立書で、もう一つは訴訟を起こされたときの訴状です。
支払督促と訴訟は、手続きの流れと対処法が少し異なりますので、以下で分けて説明します。
支払督促申立書
意味 |
---|
借金の返済をしてもらえないので、裁判所の書記官に「この債務者の方に対して、借金を返すよう命じてください」と申し立てました。 |
裁判所に提出すべき書類(同封されている) |
支払督促異議申立書(又は、督促異議申請書) |
放置すると何が起こる? |
送達を受けた日から2週間以内に異議申立書が裁判所に届かないと、債務者は財産を差し押さえられる状態になる ※この時点ではまだ裁判ではない |
訴状・答弁書催告状・口頭弁論期日呼出状
意味 |
---|
債権者が、借金の返済をしてもらえないことについて、裁判の申立をしました。つまり、裁判所に対し、「債務者へ支払いを命じる判決などを出して下さい」と申立てがあったことを意味します。そこで裁判所から、「答弁書を出してください」「裁判所に来てください」といった通知が来るのです。 |
裁判所に提出すべき書類(同封されている) |
答弁書 ※場合によっては、証拠や準備書面を出すこともあります |
放置すると何が起こる? |
裁判所から遅延損害金を含めた借金の一括支払いを命じる判決が出る 債務者は、財産を差し押さえられる状態になる |
弁護士に債務整理を依頼する際にも上記の裁判所通知を持参すると話がスムーズに進みます。個人再生や自己破産で裁判所に提出するケースもあるため、破棄しないようにしましょう。
2種類の通知に共通してある最終手段、差押え。言葉だけでは少し想像しづらいですよね。
「差押え」が起こると、具体的にはどうなってしまうのでしょうか?
差し押さえの恐ろしさ
差押えの対象で代表的なのは土地・建物です。借金返済が約束通りされず、裁判所での話し合いも無視された債権者は、裁判所で認められれば債務者名義の土地や建物を差押え、競売にかけることができます。
そして、マイホームが他人に落札された場合、その家に住むのが許されなくなってしまいます。
なお、例えば住宅ローンで不動産を買った場合などには、判決がなくても不動産が競売にかけられることもありえます。
給料差押えになることも多いです。この場合、裁判所から債務者の勤め先に「給与から毎月いくらを差し引いて、指定口座に振り込んでください」という通知・連絡が届きます。
借金を滞納して裁判を起こされたことが会社にバレるだけではなく、場合によっては毎月の手取りのお給料を数万円以上取られてしまうため、よほどお給料が高くない限り、生活が破綻してしまうおそれもあります。
差押え対象にはこの他にも、銀行などへの預貯金(一定時点での口座内の全額)や換金できる車、貴金属類などがあります。
差押えをされると、生活に大きな支障が出ることも多いでしょう。債権者からの督促や裁判所からの通知は怖いですが無視だけはせず、実際に差し押さえられる前に早急に専門家に相談をしましょう。
財産が差し押さえられてしまったら
裁判所から判決書や仮執行宣言付支払督促という通知が届いたら、実際に財産が差し押さえられてもおかしくない状態になったことを意味します。
その後、差押命令(債権の差押えの場合)などの書類が届いたら、本当に財産を差し押さえられたということです。
いったん差押えをされてしまったら、解除する方法はないのでしょうか?
まず、抵当権にもとづく土地建物の差押えは解除できません(住宅ローン債権者によって差押えが行われた場合)。
ただ、裁判所の判決にもとづく一般の貸金業者などからの差押え(消費者金融やカード会社から裁判されて差し押さえられた場合)のケースでは、多くの場合には債務者が自己破産か個人再生すれば止めることができます(弁護士に依頼した時点ではまだ止まりませんのでご注意ください)。給与や銀行口座、車、貴金属類の差押えについても同様です。
どの対処方法が最善かは、全体の債務状況・収支・財産の状況などによっても異なりますので、こちらも早急に弁護士などの専門家に相談をしましょう。
ずっと放ったらかしの借金。時効にできないか?
「何年も払わず放っておいた借金について、突然裁判所から通知がきた。時効じゃないの?」
このような疑問を持つ人もいるでしょう。
確かに、借金を5年または10年返済していないと、借金が時効になることがあります。
しかし勝手に借金が消えるわけではなく、時効完成の条件を満たしているかを調べた上で時効の援用という手続きをしなければ時効によって債務が確定的に消滅することはありません。
また時効に必要な期間を経過していると思っても、実は時効が成立していないケースがあります。借金を払っていない間に、債権者に支払いの意思を伝えたり裁判所で判決が出たりすると時効期間の進行が止まるからです。
何年も前のことで覚えていない方が多いのですが、専門家が債権者や裁判所とやりとりをして調べると、「書面などで支払いの意思を示した」「判決が出た」などの事情が判明し、時効の条件が満たせないことがあります。
放ったらかしにしていても借金は時効になりません。時効の援用手続きを行う必要があります。そして、時効の可能性がある借金については弁護士に依頼して、まず調査、そして時効になりそうであれば援用手続きをしてもらうのが最善です。
時効援用について詳しい記事はこちら:「【借金返済】消滅時効の援用手続きとは?」
まとめ
借金返済を滞納すると、裁判所から通知が来ることがあります。
その場合、まずは任意整理で分割にできないか、早急に弁護士などの専門家に相談しましょう。
債権者が任意整理に応じてくれない場合や、額が大きく返済しきれない場合などに自己破産や個人再生も検討することになります。
差押えの対象は土地建物、給与、車など生活に直に影響が出るものばかりです。差押えが起こる前に対応するのがベストですが、抵当権などの担保がついていない限り、万が一差押えされてからでも、自己破産や個人再生を行えば解除できるケースが多いです。
放ったらかしの借金はそのままにしていてもなくなりません。借金を時効で消滅させるためには、必要な期間が経過した後に時効の援用をしなければなりません。自分で対処すると不備が生じるケースも多いので、弁護士事務所に対応してもらいましょう。
どの状態でも、請求金額を一括で返済できない場合は弁護士への相談により解決できる可能性が高いです。