
自己破産を検討している方の中には、すでに障害年金や老齢年金を受け取っている方もいるでしょう。自己破産をすると、現在受け取っている年金、また現在支払い中で将来受け取るはずの年金はどうなるのでしょうか。
今回は、自己破産をしても年金は受け取れるのか、年金の支払いは免除になるのかなどについて解説します。
- 自己破産をしても公的年金と企業年金は問題なく受給できる
- 個人年金は生命保険などと同じく、積立額によっては受け取れない可能性がある
- 自己破産をしても公的年金の支払い義務はなくならない
目次
公的年金は受給できる
自己破産しても公的年金の受給は問題なくできます。公的年金の差押さえは法律で禁止されているからです。
① 厚生年金保険法、国民年金法、恩給法、国家公務員共済組合法、中小企業退職金共済法、小規模企業共済法等の法律に基づく保険、共済又は恩給に関するもの
(引用元:差押禁止財産 | 国税徴収法ー税務研究会)
公的年金とは以下のようなものです。
- 国民年金(加入者は、条件を満たせば老齢基礎年金・障害年金・遺族基礎年金が受け取れる)
- 厚生年金(加入者は、条件を満たせば老齢厚生年金・遺族厚生年金・障害厚生年金が受け取れる)
- 共済年金(平成27年より厚生年金に統合された)
現在このような公的年金を支払い中の場合は、自己破産することによって将来の年金が受け取れなくなるということはありません。
また、公的年金の受給中に自己破産をしても、年金の給付が停止されることはありません。
公的年金を受け取る口座には注意が必要
自己破産の対象である債権者(借金の貸主)に銀行もしくは銀行グループ会社が含まれている場合、手続きの間一定期間その銀行口座は凍結になります。
公的年金の受給中に自己破産をする場合、債権者である銀行の口座で年金を受け取っている場合は、債権者とは無関係の銀行口座に受け取り口座を変更すると安心です。
口座が凍結になっている場合、年金の受け取りができない・もしくは受け取りの手続きに多くの時間を要してしまうからです。
たとえば、A銀行を含む数社から借金をしている方が自己破産をする場合、年金の受け取り口座をA銀行以外の、借入れのない銀行口座に変更しておくのが最善です。
自己破産を依頼する弁護士からこのような注意事項は教えてもらえることが多いですが、自分でも注意しておくと良いでしょう。
公的年金の支払いは免除されない
自己破産をしたとしても、国民年金や厚生年金といった年金の支払い義務は免除されません。税金や年金保険料は非免責債権といって、自己破産をしても支払い義務がなくならない債権だからです。
年金を何百万円と滞納していたとしても、自己破産によってそれをゼロにすることはできません。
企業年金も受給できるが、退職金制度がある場合は注意
企業によっては、退職金の代わりに確定拠出年金や確定給付企業年金といった企業年金を導入している場合があります。
このような確定拠出年金や確定給付企業年金なども、法律で差押えが禁止された差押え禁止財産ですので、問題なく受給できます。
③ 確定給付企業年金法に基づく年金、一時金及び脱退一時金並びに確定拠出年金法に基づく年金及び一時金
(引用元:差押禁止財産 | 国税徴収法ー税務研究会)
しかし、会社に退職金の制度があるという場合は注意が必要です。
自己破産すると退職金が全て没収される、ということはありませんが、「破産手続開始決定時点で退職したならばもらえる退職金」を試算して、その試算額の8分の1(もしくは4分の1)が20万円以上ある場合には、この8分の1(もしくは4分の1)の金額を裁判所に納める必要があります。
見込み退職金の8分の1もしくは4分の1の計算方法や支払い方法は、依頼した弁護士などと相談しましょう。
個人年金は解約して債権者に配当する対象となる
自己破産をすると差し押さえられる可能性があるのが、民間の保険会社による個人年金です。
こちらは公的年金と違い、差押え禁止財産ではありません。
生命保険の解約返戻金と同じ扱いになり、予定されている年金の受取額が高額になる場合は、解約して債権者に配当する必要がある(しなければ差し押さえをされる)と考えて良いのです。
基準は全国の裁判所によって微妙に異なりますが、東京地方裁判所では破産手続き開始決定時に年金積立額が20万円以上ある場合は、換価(解約して債権者に配当)するルールとなっています。
自己破産における財産について詳しい記事はこちら:「自己破産したら車や持ち家はどうなる?残せる財産と残せない財産の基準【完成版】」
まとめ
自己破産をしても公的年金と企業年金は問題なく受給できます。ただ、自己破産手続き中、年金を受け取る銀行口座には注意が必要です。また、退職金の試算額によっては、裁判所にお金を納める必要があります。
個人年金は生命保険などと同じく、積立額によっては受け取れない可能性があります。
自己破産をしても公的年金の支払い義務はなくなりません。