自己破産をしたら退職金はどうなる?処分対象になる・ならないケース

最終更新日:2021/12/24

監修

弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 淺海 菜保子

弁護士法人サンク総合法律事務所 淺海 菜保子

手持ち金なし 債務整理

自己破産をすると、破産者の現金・貯金を含む一定額以上の財産は没収され、債権者に配当されます。

それでは受け取った・もしくは将来受け取る予定の退職金はどのような扱いになるのでしょうか?「自己破産すると退職金が受け取れない」ということが起こり得るのでしょうか。

本記事では、自己破産をすると受け取り済み、または将来受け取る予定の退職金がどうなるのかを解説します。ぜひ、自己破産を検討している方はお役立てください。

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この記事の要約
▼自己破産をする場合、退職金も換価処分の対象になる▼財産としてみなされる割合は、退職金を受け取る時期により異なる
・退職金を受け取り済みの場合…全額
・退職金支給が近々に行われる場合…4分の1
・在職中で、現時点では退職の予定がない場合…8分の1

▼自己破産では、裁判所から退職金見込金額証明書が求められる場合がある。もっとも、その場合にも、職場に対して自己破産することまで申告する必要は無い。そのため、職場に対しては、「住宅ローンの審査に必要」などと説明して、証明書を取得するなどの方法が考えられる



退職金は、基本的に処分の対象となる

債務整理 財産

自己破産をすると、現金・預貯金を含む一定額以上の財産が換価処分(現金化され、債権者に配当)されます。

運用は裁判所によって異なりますが、たとえば東京地方裁判所では、現在は「現金は99万円まで、預貯金や保険・車などの個別の財産については20万円分までであれば手元に残せる」という運用になっています。

すでに退職金を受け取っている場合は全額が換価処分対象

自己破産の申立てをするときに、すでに退職金を受け取っている場合、その退職金を現金で保管している場合は「現金」、退職金を預金・貯金口座で保管している場合は「預金」として扱われます。そのため、もとは退職金ではありますが現金または預貯金の扱いとなり、全額が換価処分対象に該当します。

退職金全額が処分されるわけではなく、「現金は99万円を超える分」など一定額以上の部分のみ処分の対象となる点に注意しましょう(自己破産を申し立てる裁判所の運用を確認しましょう)。

また、すでに退職金を受け取っている場合は、あくまで、その時点で残っている退職金が対象となります。そのため、たとえば東京地方裁判所の運用では「手続き時点で現金99万円以下・預貯金が20万円以下であれば処分対象とならない」と考えて良いでしょう。

退職金の支給が近々行われる場合

自己破産の申立てをする時点ではまだ退職金を受け取っていないものの、近々、退職金の支給が行われる場合、退職金の4分の1が処分の対象となります。退職金とは、基本的に退職後の生活を守るものであり、法律で4分の3が守られているためです。

たとえば東京地方裁判所の運用では、退職金支給金額が80万円以下の場合、4分の1は20万円以下となるため、処分対象にならず、自分の手元に残すことが可能です。

在職中で、近い時期に退職する予定がない場合

退職金制度はあるものの、現時点で退職金を受け取る予定がない方は、一般的に退職金の支給見込金額の8分の1が財産として評価されます。ちなみに退職金の支給見込金額とは、破産手続きの開始が決定された時点で退職した場合に計算した退職金の支給額です。

「自己破産の申立ての時点では、近い時期に退職の予定がない」という場合は、退職金を受け取れるかどうか確実ではなく、退職金がいくらになるか明確にならないため、東京地方裁判所など多くの裁判所では、自由財産拡張基準によって処分対象を4分の1の半分である8分の1で済む取扱いをしているのです。

さらに、東京地方裁判所では、この8分の1の金額が20万円以下の場合には,退職金の全額を自由財産とするという取扱いをしています。

つまりこのケースでは、退職金の支給見込金額が160万円以下の場合は全額残すことが可能です。たとえば、退職金の支給見込金額が800万円の場合は、100万円が処分の対象となります。

しかし退職金が換価処分の対象になった場合も、勤務先の会社を退職する必要はないため安心してください。

自己破産をする時期 退職金が財産として扱われる割合
退職金を受け取り済 全額
退職金の支給が近々行われる予定 4分の1
在職中で近い時期に退職の予定がない 8分の1

退職金が処分対象にならないケースとは?

もっとも、一言に退職金や年金と言っても、そもそも法律上差押えが禁止されているため、換価の対象とならないケースもあります。

・中小企業退職共済制度の退職金
中小企業退職共済とは、自社で退職金制度を設けることの難しい中小企業が、国が掛金の一部の助成や、事業主の相互共済の仕組みにより退職金制度を設けた退職金制度です。

・小規模企業共済制度の退職金
小規模企業共済とは、中小企業の経営者や役員の加入できる中小機構が運営している退職金制度です。

・確定拠出年金
確定拠出年金とは、掛金を事業主が拠出する「企業型年金」と、個人で拠出する「個人型年金」があります。拠出された掛金と運用収益を合わせた金額をもとに、給付金が確定する年金制度です。

・確定給付企業年金
確定給付企業年金は「規約型企業年金」と「基金型企業年金」の2種類にわかれています。

規格型企業年金は、企業から委託を受けた生命保険会社や信託会社が、管理・運用・給付をする年金制度です。また基金型企業年金は、企業年金基金が管理・運用・給付をする年金制度です。

・厚生年金基金
厚生年金基金は、国の老齢厚生年金の基金代行部分にプラスアルファを上乗せして、支給される年金制度です。

上記のものは、それぞれの法律で、差押えが禁止されています。そのため、破産の手続きの中で換価されないものとなります。

この点、確定拠出年金について見てみますと、下記のとおり、差押えが禁止されている内容が確定拠出年金法に記載されています。

確定拠出年金法第32条
”給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。ただし、老齢給付金及び死亡一時金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押さえる場合は、この限りでない。”
引用元:確定拠出年金法

自己破産は裁判所に退職金の証明書の提出が必要?

面談

自己破産の申立てをする場合には、一般的に、裁判所から「退職金見込金額証明書」の提出を求められます。この証明書は勤務先に作成してもらう必要がありますが、その場合、勤務先から、証明書発行の理由を問われる可能性もあります。

もっとも、この時自己破産の申立てを検討していることを、そのまま勤務先に伝える義務はありません。そのため、証明書が必要な理由として、たとえば「住宅ローンの審査に必要」などと説明をするなどの方法が考えられます。しかし、勤務先が退職金見込金額証明書を作成してくれないなどの場合は、自身で退職金見込金額の計算をして、その内容を書類にまとめてみましょう。

このように、自己破産をすることを職場に伝えない・感づかれないように、証明書を得る方法が考えられます。

自身で退職金見込金額証明書を書く場合は、就業規則にある退職金規定に、退職金の計算方法が記載されていることが多いため、自身で計算することが可能です。そして、自身で計算したものを勤務先へ確認をしてもらうことで、退職金見込金額証明書が作成できます。

そして自己破産を申し立てる場合は、所有している財産を「財産目録」へ全て記載して提出しなければいけません。そのため、退職金制度を設けている勤務先の場合、財産目録の「退職金請求権・退職慰労金」の欄へ、計算をした退職金の見込額の記載が必要となります。

自己破産の申立てをする裁判所により、必要書類や、記載するべき内容は異なります。そのため、どんな書類や資料が必要になるのか、疑問や不安なことは弁護士に相談すると良いでしょう。

できる限り財産を残す方法として個人再生もある

個人再生

債務整理には、自己破産とは別に個人再生という方法もあります。個人再生とは、裁判所を通じて借金を5分の1程度に減額した金額を返済していく方法です。残った金額は、原則3年以内で返済します

個人再生における退職金の扱いも、自己破産と基本的に同じです。退職金を受取後は全額が換価処分の対象となります。また退職金支給が近々行われる場合には、退職見込金額の4分の1が換価処分の対象です。まだ退職の予定がない場合では、退職金支給見込額の8分の1が換価処分の対象となります。

個人再生は、条件がありますが、自分自身の財産を手元に残しながら、借金を減額して、完済を目指すことのできる手続きです。しかし退職金をすでに受取り済みの場合や一定額以上の価値の財産がある場合は、返済額が大きくなる可能性もあるため、個別具体的な状況を、総合して判断する必要があります(具体的なことは弁護士に相談するのがおすすめです)。

自分には自己破産と個人再生のどちらが適切なのか、何が最善の方法なのかは、個人で判断することは難しいものです。特に、個人再生は複雑な手続きになりますので、個人再生を検討したい場合は弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

自己破産をする場合、退職金も換価処分の対象になります。財産としてみなされる割合は、退職金を受け取る時期により異なります。

  • 退職金を受け取り済みの場合…全額
  • 退職金支給が近々に行われる場合…4分の1
  • 在職中で、現時点では退職の予定がない場合…8分の1

自己破産では、退職金見込金額証明書や財産目録などの書類も必要です。

もっとも、職場には「住宅ローンの審査に必要」などと説明したり、自身で退職金見込金額を算出するなど、職場に自己破産を伝えない・感づかれない工夫はあります。

債務整理には自己破産や個人再生などさまざまな方法があり、個々のケースによって、適切な方法がそれぞれ異なります。また「債務整理をするためには、どのような資料を、いつごろまでに揃えないといけないのだろうか?」「退職金をできるだけ手元に多く残したい。だけど、早めに借金問題も解決したい」などの、疑問や希望がある場合には、早めに弁護士事務所に相談すると、適切な解決策が見つかるでしょう。

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