
個人再生をする際に、家族などの身内や会社にバレるのは避けたいと考える方は多いでしょう。家族や会社にバレずに個人再生をするための注意点や、バレないためにできることなどはあるのでしょうか。
本記事では、家族や会社に個人再生がバレてしまうケース、個人再生がバレてしまった時の影響などについて解説しています。
▼個人再生を隠していても気付かれる可能性が高いため、家族に事前に伝えた方がよいケース
・家計を共にする家族がいる
・家族を保証人にしている借金がある
・家族からの借金がある
・ローンで購入し、支払い中の商品がある
・家族のためにローンを組む予定がある・家族カードを利用している
▼以下のようなケースは会社に事前に伝えた方がよい場合がある
・会社から借金をしている
・退職金見込証明書を発行してもらうときに事情を聞かれる(他の理由を言って発行してもらったり、自分で発行できたりする場合もあります)
▼周囲になるべくバレずに借金問題を解決するためにも、弁護士などの専門家に相談・依頼をするのがおすすめ
目次
個人再生がバレてしまった時の影響や弊害は?
そもそも、個人再生をしたことが周りに知られたときには、どのような影響や弊害があるのでしょうか。「こうなるのでは?」とイメージされがちな事例について、いくつかピックアップしてみましょう。
会社に個人再生がバレたらクビになる?
個人再生をしたことが会社に知られたとしても、それが原因で解雇されたり、いわゆる左遷のような扱いを受けたりすることは基本的にありません。
労働契約法では「客観的に合理的な理由を欠き」「社会通念上相当であると認められない解雇」については無効であると定めています。
個人再生を含む債務整理をしたという事実だけでは、解雇や減給などの不当な扱いを受ける理由にはなりませんし、過去にそういった判決も出ています。
家族に個人再生がバレたら離婚になる?
個人再生をしたということだけを離婚の原因とすることはできません。
借金や債務整理は、民法が定める離婚の理由にはあたらず、それだけで夫婦関係が破綻するとはいえないためです。
もし個人再生がバレて、離婚について裁判になったとしても、個人再生だけを離婚理由とするのは相応ではないという判決になるでしょう。
個人再生がバレたら家庭が崩壊する?
「個人再生が家族や会社にバレて、家庭が崩壊したらどうしよう?」と不安に思う方の中には
「借金の取立てが自宅や会社にやってくる」
「家族が生活で制限を受けたり、家族の財産を処分されたりする」
といったイメージを持つ方もおられるかもしれません。
しかし、個人再生をしたからといって、上記のような事態になることは基本的にありません。むしろそうならないために行うのが個人再生であるといえます。
個人再生は、債権者である借入先に対して、裁判所を通じて借金の大幅な減額をしてもらい、最低弁済額を支払うという手続きです。法的に借金問題を解決する救済措置となっています。
個人再生などの債務整理をせず、借金を返さずに放置していた方が、激しい督促や財産差押えといったリスクが高まるでしょう。
ただし、「個人再生がバレた際の経緯」によっては、トラブルのきっかけになるおそれは否定できません。
本来、個人再生することは家族に共有した方がよい
個人再生をする際、基本的には家族にもその情報を共有しておくことをおすすめします。
理由として、まず家計を共にする家族の協力が手続きに必要な場合があるからです(具体的には後述します)。
また、個人再生したことが後でバレると、個人再生の事実よりも「黙っていた・隠していた」「嘘をついていた」ことへの不信感が大きくなるからという理由もあります。
個人再生をしたことよりも、大事なことを隠していたことの方が、家族にとっては大きな問題であることが多いのです。
家族に個人再生がバレる・事前に伝えた方がよいケースとは?
以下のようなケースでは、個人再生を隠していても気付かれてしまうため、事前に伝えた方がよい場合が多いです。
家計を共にする家族がいる
個人再生では、同居している家族に収入がある場合、その収入について所定の書類に記載し、収入を証明する書類(源泉徴収、確定申告書の控えなど)を添えて裁判所へ提出する必要があります。
また、家計表として、家賃や水道光熱費、通信費といった生活にかかる費用についても記載しなければなりません。
同居の家族がいる場合、こうした書類の準備や作成に協力が必要となります。
家族を保証人にしている借金がある
借金をする際に家族を保証人として借入れした場合、個人再生をすると保証人に借金返済の義務が生じるため、債権者から保証人である家族に対して借金の支払いを要求されます。
個人再生すると借金の返済額を大幅に減らすことができますが、借金を減額できるのは個人再生をした本人が返済する場合で、保証人が返済する場合は減額されないことが法律で定められているのです(民事再生法177条)。
特に連帯保証人の場合は責任が重く、債権者からの請求を拒否する抗弁権がありません。
もし家族が保証人となっている借金を個人再生する場合、家族にそのことがバレるのはもちろんのこと、保証人である家族が残りの借金を返済するか、同じく債務整理をすることを検討しなければなりません。
家族からの借金がある
個人再生を申し立てる際には債権者一覧表を作成する必要があります。
家族から借金をしている場合、債権者一覧に家族の氏名や住所、借金総額などを記載しなければなりません。
債権者一覧に記載された債権者のもとへは、個人再生の申立てがあった旨の通知が裁判所から届くこととなります。
そのため、家族から借金をしている場合は、個人再生の手続きが進むとバレてしまうこととなるでしょう。
もし家族にバレたくないからといって一部の債権者を除外したり、真実でない記載をしたりすると、個人再生の認可が下りず、手続きが失敗してしまうおそれがあります。家族から借金がある場合でも、正直にその旨を記載する必要があるのです。
ローンで購入し、支払い中の商品がある
車や高額商品など、ローンを組んで購入している商品がある場合、所有権がローン会社にある契約となっていれば、個人再生をすると商品を引き渡さなければならなくなります。
車やパソコンなど、ローンが残っている商品を家族が使っている場合には、個人再生がバレる原因となります。
家族のためにローンを組む予定がある・家族カードを利用している
個人再生後は、信用情報に事故情報として履歴が残ります。そのため、一定期間ローンやクレジットカードの審査に通りづらくなります。
現在利用しているクレジットカードがある場合には、個人再生をすると利用できなくなりますし、家族カードも利用できなくなります。
もし、個人再生をする方の名義で住宅ローンや学資ローンなどを組む予定がある場合や、同居の方がクレジットカードの家族カードを使っている場合は、ローン審査が通らない・クレジットカードが使えなくなるなどの理由から、個人再生などの債務整理が疑われるおそれがあります。
会社に個人再生がバレるケースとは?
家族に個人再生が気付かれるよりも、会社に個人再生が気付かれる確率の方が低いです。基本的には債務整理をすることを会社に伝える必要はありません。
しかし、その中でも会社に個人再生がバレるケースはありますので、詳しく見ていきましょう。
会社から借金をしている
個人再生では、「すべての債権者を平等に扱わねばならない」という債権者平等の原則がはたらきます。弁護士に依頼した後に、勤め先の会社に対してだけ返済を続けることは、債権者間で不平等な取扱いをすることになってしまうため認められません。
また、弁護士から受任通知を送らなければならないため、勤め先の会社から借金している場合には、事前に勤務先に事情を説明してもらう必要があります。
これらの理由から、「勤務先から借金をしている場合は、会社に内緒で再生の手続きを進めることはできない」と考えておきましょう。
退職金見込額証明書を発行依頼したとき
個人再生においては、裁判所に、退職金の見込額を申告する必要があります。
退職金を処分されることはありませんが、清算価値保障原則によって借金の減額幅に影響が出るのです。
そこで、個人再生の申立て時には「退職金見込額証明書」という書類が必要となります。
基本的には、退職金見込額証明書は会社へ発行を依頼しなければならないため、そこでバレるおそれはあります。
ただ、発行の際に必ずしも「個人再生の手続きに必要」と伝える必要はないため、ローンの審査などで必要であると説明して発行してもらう方法もあります。
また、就業規則や退職金規定等退職金計算の根拠となる書面があり、それらに基づいて退職金見込額を計算できるのであれば、必ずしも見込額の証明書を勤務先に発行してもらう必要はなく、根拠となる書面の提出と、計算書の作成・提出だけで済む場合があります。
個人再生における退職金の扱いについて詳しい記事はこちら:「退職金の清算価値や手続きについて解説!」
官報の掲載で様々な人に個人再生がバレてしまう?
個人再生をすると、その事実が官報へと掲載されることとなります。
官報とは
官報とは、国が発行している広報誌で、官報へ記載された内容は、インターネットで誰でもアクセスして閲覧することが可能です。
官報に掲載される内容は主に以下です。
- 申立人の氏名及び住所
- 手続きをした日時
- 手続きをした裁判所
官報について詳しい記事はこちら:「個人再生をすると載る「官報」とは?【債務整理】」
官報でバレるリスクはゼロではないが、可能性は低い
官報は図書館と、都道府県に1つしかない「政府の刊行物販売所」に置かれており、オンラインで閲覧できる情報も、直近30日以内となっています。
もし職場を通しての借入れがあったり、定期的に官報のチェックをしていたりするような会社であればバレるかもしれませんが、そういったケースは多くはないでしょう。
官報は誰でも見られるとはいっても、そもそも見ようとする人も限られており、見ない人が大多数であるといえます。
「官報によって様々な人に個人再生がバレる」と考えて不安になる必要はないでしょう。
家族や会社に個人再生がバレるリスクを少なくしたい場合は?
家族や会社に個人再生がバレるリスクを少なくするためには、以下のような方法を検討するとよいでしょう。
個人再生が本当に必要か検討する
個人再生をする前に、その申立てが本当に必要かをよく検討することが大切です。
場合によっては、裁判所を通さない任意整理の方法を採った方が、家族や会社にバレるリスクは下げられます。
しかし、任意整理で変更できるのは利息の軽減や返済方法、支払回数であるのに対し、個人再生では最大で5分の1まで借金を減額することが可能です。
軽減できる借金の額がかなり違うため、たとえバレるリスクがあったとしても、個人再生を選んだ方がよいのであれば検討するべきです。
弁護士事務所からの郵便物の差出人名を変更してもらう
弁護士事務所の中には、郵便物の差出人名を弁護士事務所名でなく個人名などに変更してくれるところもあります。
「弁護士事務所からの通知でバレる」リスクを下げることはできますが、そうなる前に、しっかりと自分から個人再生について家族へ説明し、理解を得て協力してもらうのに越したことはありません。
基本的に、個人再生を家族に内緒にし続けること自体がリスクのある行為であると考えておいた方がよいでしょう。
弁護士などの専門家に相談する
個人再生の手続きを弁護士に依頼すれば、申立てまでの準備期間は債権者への返済をストップしておくことができますし、その間の督促・取立ては基本的に止まります。
また、債権者からの郵便物なども依頼後は届かなくなります。
自分で個人再生の手続きをする場合や、借金を返済せず滞納している場合などに比べ、弁護士に依頼すると借金問題や個人再生をしていることが周囲によりバレにくくなります。
個人再生の流れやバレたときのリスク、そもそも個人再生が自分にとって最適なのかといった疑問も含めて、弁護士などの専門家へ相談するのがおすすめです。
何よりも、多くの書類や資料の準備が必要な個人再生では、書類の不備や記載漏れなど無しに自力で申立てを行うことは難しいです。
債務整理の実績が多い弁護士へ依頼すれば、裁判所とのやりとりや、難しい再生計画案の作成などがプロの手でスムーズに進められます。
家族や会社への借金、保証人の問題などについても相談に乗ってもらえるため、個人再生について検討するなら、早い段階で専門家へ相談して進めましょう。
まとめ
個人再生がバレたとしても、個人再生だけを理由に離婚や解雇をすることはできないため、リスクを減らした上で個人再生を活用するとよいでしょう。
個人再生をする際、基本的には家族にもその情報を共有しておくことをおすすめします。家計を共にする家族の協力が手続きに必要な場合や、バレた際に個人再生を隠していたことが家族の不信感につながる場合が多いためです。
以下のようなケースでは、個人再生を隠していても気付かれてしまうため、家族に事前に伝えた方がよい場合が多いです。
・家計を共にする家族がいる
・家族を保証人にしている借金がある
・家族からの借金がある
・ローンで購入し、支払い中の商品がある
・家族のためにローンを組む予定がある・家族カードを利用している
個人再生を内緒にしていた場合、家族に個人再生が気付かれる可能性より、会社に個人再生が気付かれる可能性は低いですが、以下のようなケースは会社に事前に伝えた方がよい場合があります。
・会社から借金をしている
・退職金見込証明書を発行してもらうときに事情を聞かれる(他の理由を言って発行してもらえる場合などもあります)
家族や会社への丁寧な説明や、弁護士・専門家への相談によって可能な限りトラブルを避けることができます。個人再生を考えている方は合わせて検討するようにしましょう。